そもそも、なぜ
アレルギー体質になるの?
アレルギー体質の人が年々増加中
現在の日本では、国民の約2人に1人が何らかのアレルギー体質を抱えていると言われています。特に、ここ30年間で花粉症の患者数は約17倍に増加し、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の患者も年々増え続けています。
アレルギー性鼻炎(花粉症)、
アトピー性皮膚炎患者、増加!
調査の時期:10月中旬の3日間のうち医療施設ごとに定める日において実施(定点調査)
注1)推計患者数:患者調査において、調査日現在、継続的に医療を受けている者(調査日には医療施設を受療していない者も含む。)の数を、算式により推計したもの。
花粉症患者は、約30年で17倍に増加!
では、なぜ人はアレルギー体質になってしまうのでしょうか? 近年の研究によって明らかになってきたのが、さまざまなアレルギー症状の原因は、「免疫細胞の勘違い」であるということです。
アレルギーの原因は「免疫細胞の勘違い」
人の体には、外から侵入してきた病原菌やウイルスなどの有害な異物を排除するために働く免疫細胞が存在しています。これらの免疫細胞は異物を感知すると、くしゃみや涙といった反応を引き起こし、異物を体外へ排出しようとします。この反応自体は、病原体から身を守るための正常な生命活動です。
しかし、花粉やホコリ、ハウスダストなどは本来、体内に入っても健康を害するものではありません。それにもかかわらず、免疫細胞がこれらを病原菌と誤認し、体外へ排出するために刺激物質を作り出し、過剰に反応してしまうことがあります。その結果、くしゃみ・鼻水・かゆみといったアレルギー症状が現れるのです。
つまり、アレルギー症状とは、本来無害なものに対して、免疫細胞がそれらを「有害」と勘違いし、過剰な反応を起こしてしまうことです。この「免疫細胞の勘違い」が、アレルギー体質の根本的な原因だということが、研究によって裏付けられつつあります。
免疫細胞の「判断力」を育てるには?
一方で、同じように花粉やホコリに日常的に触れていても、アレルギー症状が出ない人もいます。その違いは何なのでしょうか? これは、そのような人の免疫細胞が、花粉やホコリを「無害」と正しく判断できているからです。免疫細胞には本来、異物への反応を調整する「判断力」が備わっており、この判断力が適切に働いていれば、無害な物質に過剰反応することはありません。
では、この免疫細胞の判断力を高めるにはどうすれば良いのでしょうか? 近年の研究では、免疫細胞の判断力を高めるには、日常的に多種多様な菌と接することが重要だと考えられています。悪い菌も含めたさまざまな菌に触れることで、免疫細胞は多様な刺激を受け、過剰反応を抑える力が養われます。
実際、都市部に住む人々と比べて、多種多様な菌が存在する山や川のある地域で、田畑を耕しながら生活する人々の方が、アレルギー体質の割合が非常に低いことが報告されています。こうした環境では、日常的に多種多様な菌と触れ合うことで、免疫細胞が自然と「教育」されていると考えられます。
ただし、たまに土に触れる程度の週末ガーデニングなどでは、免疫細胞の教育としては不十分です。都市部で暮らす人にとって、多種多様な菌と日常的に接することは、難しいのが現状です。
ところが近年、研究が進む中で、免疫細胞には「アレルギーを抑制するスイッチ」が備わっていることが明らかになってきました。このスイッチを適切に稼働させることができれば、免疫細胞の勘違いを防ぎ、アレルギー反応を抑えることができるのです。

キユーピー株式会社
奥山洋平
キユーピー株式会社入社後、研究所を中心に、経営企画部、マーケティング部、知的財産部を経て現職(免疫・認知プロジェクト 次長)。2012年社内ビジネスコンペでのテーマ選出を契機に、酢酸菌事業化プロジェクトのリーダーに従事。

